暗殺者の英霊。他のクラスと違い、ある英霊しか成れない筈のクラス。
柳洞寺に至る山門を守る侍。
佐々木小次郎がこのクラスになったのは、偏に召喚者がルール違反の者だった為。
厳密には英霊ではなく亡霊。
過去、柳洞寺に縁のあった武芸者と思われる。
本名は不明。というより、本名などない。
もとより仕官の可能性がなかった為か我欲がなく ただ剣の境地に立つという願いだけを糧とし、その果てにサーヴァントの宝具が備える神秘と互角の剣技を得るに至った。
純粋な剣技のみで言えば、今回の聖杯戦争中最高のサーヴァントである。
柳洞寺を触媒にして召喚されたので、あの山門から離れる事は出来ない。
……む?なんか地縛霊っぽい?
姿なき暗殺者。マスターはユリウス。
その真名は李書文[りしょぶん]。
1864~1934年に生きた人物で、
「李書文に二の打ち要らず、一つあれば事足りる」
と恐れられた、中国拳法史史上、有数の拳法家。
試合の末、たやすく命を奪うことから「凶拳李」とも呼ばれたという。
ゲーム本編では他のアサシンたちとは一線を画す“気配遮断”を発揮、見えない暗殺者として主人公の前に立ちふさがった。
対手を殺す事に何の抵抗もない冷酷な人だが、殺人鬼や殺人快楽症ではない。「武を交えるのならどちらかは死ぬ。戦いとは気安いものではなく、互いの信念をかけたもの。故に、おいそれと始めるものではなく、また、始めたからには必ず、一戦にて一人は殺すべし」
それがEXTRAにおけるアサシンの信条である。
彼は極めて合理的かつ公正に、戦いとはそういうものと捉えているのだろう。
マスターであるユリウスも人命を奪う事を生業とする男なので、マスターとの相性はいい。
もっともユリウスは殺し屋でありアサシンは武人なため、根本的なところで話が噛み合わない。
ユリウスは職業として殺しを呑みこみ、
アサシンは武人として殺し合いの日々を良しとしている。
殺人鬼ではないが、いざ戦うのならこれを楽しむ。
そうでなければとても武など極められまい、と豪快に笑うアサシンに、ユリウスは「……そういうものか」と生真面目に返すのだった。
李書文はアサシンのクラスではあるが、その戦闘力がもっとも高まるのは槍を扱う時だ。
李氏八極門の祖である李書文は、神槍李とあだ名されるほどに槍に長けた人物だった。
彼の使った六合大槍は、八極門の基本的な武器であり、極論して良いならば八極門の素手の技法(八極拳)のほとんどはこの六合大槍の技法を学ぶための前段階に過ぎないとさえいえる。
単純に(純粋に、ではない)自身の強さのみを求めた李書文だが、晩年は暴力の強さではなく、自身の生き方、信念の強さに武を見いだした。
自身を拳法家というより殺し屋のたぐいと自認しているが、それを卑下する事も、誇る事もない。
生前は善[よ]く学び、善く戦い、善く殺めたので、無念や怨念はまったく持っていない。
サーヴァントとして召還されてからは主であるユリウスの暗器として、ためらいなく凶拳を振るった。
今回はユリウスに合わせてアサシンになったが、彼の本領はランサーにある。その時は晩年の、老熟した達人の姿で現れる事だろう。