フェイカー

影武者や偽物を呼び出すための、ハートレスがつくりだしたエクストラクラス。
事件簿本編では、『王の軍勢』を無視する、イスカンダルの影武者をさす。固有スキル「彼もまたイスカンダルなのだから」(偽)によって、イスカンダルのいくつかのスキルと、宝具・神威の車輪を変則的に模倣した彼女は、出会った頃のII世を精神的に大きく揺さぶった。
その出自は、征服王イスカンダルの母・オリュンピアスによって、生涯イスカンダルを守護すベく製造された、ヘファイスティオンの双子の妹。
影武者といいつつ、ニメートルを超える偉丈夫イスカンダルと似ても似つかないのは、彼女が魔術的な影武者であるため。
よって、彼女は名前を持たない。
オリュンピアスと離れた後、イスカンダルは何度も名を与えようとしていたのだが、そうなればイスカンダルを狙った呪いを引きつける術式は衰えるため、毎回彼女は固辞していた。そればかりではなく、イスカンダルを狙った各種の呪いや魔術を防ぐため、数々の情報工作も講じていた。後世に残ったイスカンダルの姿が、サーヴァント・イスカンダルと一致しないのはこれによるものである。
フェイカーというクラス名は、ある意味で彼女が初めて得た名前にも等しかったのだ。
人類史にまともに刻まれた逸話をもたない彼女は、サーヴァントとしての格は高くないものの、総合的にはかなり高い戦闘能力を保持している。これは単なるスキルや宝具だけの問題ではなく、魔術や白兵など戦闘で取れる選択肢の多さと、その中から最適解を選び出す嗅覚の鋭さのゆえだ。
彼女が作中ロにした通り、「戦士たるとは肉体と意志と魂すベての問題だ」ということになろう。戦闘を楽しみ、自分の持つ能力で数々の戦場を突破してきた彼女だからこそ、霊墓アルビオンをハートレスとふたりきりで突破することを可能としたのだ。
ハートレスとのコンビは、まるで不似合いのようでいて、彼女には存外心地よかった。
詳しい事情こそはっきり語らなかったものの、弟子の裏切りによって人生を変えられたハートレスと、後継者戦争による裏切りが許せなかった彼女は、価値観の底が一致していたのだろう。

彼女が奉じるディオニュソスは、いわゆる酒神バッカスに相当する神性だが、フェイカーの扱う魔術においてはむしろ狂気に陥ったゼウス本人をさす。つまり、それは万能にして狂気なる神だ。理性を打ち捨てた無限の混沌こそは、魔術の源としてふさわしい。
当然、酒の神を奉ずる彼女もまた大変な酒豪で、あのイスカンダルはおろか、酒飲みにおいてはその腹心全員を何度となく負かしたことがあるとか。
なお、彼女が『王の軍勢』を拒否していた流れは、「イスカンダルに呼ばれる」⮕「召喚直前、世界に後継者戦争などの基礎知識を与えられる」⮕「召喚が完全成立する前に拒否」という順番になる。召喚された英霊は、聖杯ないし世界からその時代の知識を与えられるのだが、『王の軍勢』に呼ばれた英霊は後者となるためだ。
今回の事件で起きたことも、再びサーヴァントとして召喚された彼女は当然忘れているはずだ。しかし、固有結界である王の軍勢に召喚された場合は?そんな時系列を無視するような特異点、はたまた冬木のそれとまったく異なる召喚形式で呼ばれた場合は?
答えは、そのときになるまで分からない。

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