ランサー(黒)

四回戦で戦う事になるサーヴァント、そのいち。
マスターはランルーくん。
黒い甲冑に血まみれのマントを羽織った、血に飢えた狂気の騎士。
その真名はワラキア公ヴラド三世。
ルーマニア史に名高い、ワラキア独立を堅持した英雄。キリスト教世界の盾とも。
時は十五世紀、トルコ軍からワラキアを守り抜くため、国土を荒廃させた貴族たちを粛正し、敵対するトルコ軍の兵士2万を串刺し刑にした人物。
そのあまりの残虐性から、後に小説家ヴラド・ストーカーによって吸血鬼ドラキュラの題材にもなっている。
もともとドラキュラとは彼自身が名乗っていた自称で、「竜[ドラクル]の息子」という意味。
父親のヴラド2世が神聖ローマ帝国竜騎士団の騎士であり、ドラクルと名乗ったことに由来する。
狂信的なまでの信心からバーサーカー一歩手前と思われがちだが、優れた戦術感と厳格さを持ち、道徳を重んじる武人である。

ヴラド公は主への愛を信じ、不正をただす事で貴族の責務を果たそうとした。
しかし特権階級の豊かさにおぼれた領主たちは彼の清貧さを嫌い、キリスト世界を救った武人を策謀によって処罰した。
人々の希望である“信仰”を守ったヴラド公は、
その信者たちの裏切りによって命を落としたのだ。
サーヴァントとして現界した彼には怒りと嘆きしかない。自らの非業に怒り、人々の欲深さに嘆く。
“この地上に、主への愛は───
真の愛は、存在しないというか───?”
だが、その嘆きはすぐに癒やされる事になる。
ランルーくんというマスターを得た彼は、そこに真実の愛を見たからだ。

「望むままに愛をむさぼるがいい、拒食の君よ。
生きる為に食う獣などとは悲哀が違う。
生きる余興に愛する人間とは濃度が違う。
アナタに虚飾はない。揮猛な欲求。偽りのない求愛。
あまりにも幼い、破綻したその恋慕。
同じヒトとして吐き気をもよおさずにはいられない。ああ、だからこそ───」

「愛に狂え。その姿は美しい」

……以後、ランサーはランルーくんを妻と呼び、彼女が望むままに殺鐵を行う事になる。
彼にとってこの聖杯戦争は、果たされる事のなかった聖戦と同義となったのだ。

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